ビジネスチャットの導入で気付いた世代間コミュニケーションの難しさ
2020-01-06

最近、昭和生まれの私や私よりも上の世代の人たちが、「20代の人たちのマネジメントが難しい」と言っているのを良く聞きます。その理由は何かと考えていたところ、「メール文化」と「チャット文化」の違いなのではないかと気付きました。
それは、コミュニケーションの手段としてメールを主に使ってきたか、チャットに慣れ親しんでいるかの違いです。私はもともと「メール文化」の人間です。それでも、フリーランスの人たちから協力を得るようになったころから、BESでもチャットツールを使い始めました。
報告・連絡・相談をリアルタイム、かつオープンに行えるビジネスチャットツール。社内外の人たちと日々多くのコミュニケーションを行っています。
そんなある日、私が出すある一定のチャット(メッセージ)に、返事が来ないことに気づきました。それは、参加者全員にメッセージを送れるチャンネルから送ったメッセージでした。
全体向けのチャンネルに発信されたメッセージは、特定の個人に向けられたメッセージではありません。返信を求める連絡でないことがほとんどです。確かに、受け取った側は、コメントや「いいね」を返す必要もありませんし、自分に関係のない連絡であれば読み飛ばしても良いですよね。
「なるほど。チャットツールを使いなれている世代ほど、返信は自分が必要なときにするものという感覚があるんだ」と、ふと思いました。返信は来なくて当たり前と考えている人もいるようでした。
一方、私をはじめとする昭和世代のビジネスパーソンは、「メール文化」育ちです。自分宛てに来たメッセージには、返事をして当然だという考えがあると思います。できるなら、返事はなるべく早くしようと思っているはずです。それは、返信が遅くなると、メールをくれた相手が不安に思うからです。
チャットツールの登場で“重み”を失ってしまった言葉たち
「チャット文化」では、返信をしないことが当たり前です。返信は、自分が必要だと思ったときに出す程度。メッセージをくれた人の気持ちまで想像する機会は少ないかもしれません。なので、チャットツール上では、ひとつひとつの発言にそれほど“重み”を感じません。
一方、「メール文化」の世代には、1つ1つの発言に“重み”があります。古い言葉で言えば、発言(言葉)とは「言霊」と言えるでしょうか。それは、人間にしか与えられていない特権であり、1つ1つの発言は地球上において貴重なものだという感覚です。
そうした魂のこもった言葉たちが、あまりにも便利なビジネスチャットツールの登場によって、軽く見え始めてるようにも思いました。それが、マネジメントのしにくさに繋がっていたのではないかと思うのです。
とくに、自分宛てに来たメッセージなのかそうではないのかが、チャット上ではとても分かりにくいと思います。次から次へとメッセージが来るため、内容の重要度も見えづらくなっています。マネジメント側の人は、ツールによるコミュニケーションの障害そのものを正していく必要があるかもしれないと思っています。
ビジネスシーンだからこそ、人間味のあるコミュニケーションを大切に
コミュニケーションに対する考え方に違いのある「メール文化」と「チャット文化」。大切なのは、「メール文化」との違いを捉えて、「チャット文化」の人たちをうまくマネジメントしていくことです。若い人たちの中には、すでに「チャット文化」と呼べるコミュニケーションの取り方が定着しています。ツールを変えることもできません。お互いに違う価値観をもつ世代同士だと、違いを認めることが必要です。
その上で、関心をもって接すること。そのために私は、自分の想いを伝えることにはじまり、日ごろのコミュニケーションを1つ1つ丁寧に取っています。「今日は風邪っぽいな~」と言ってみたり、「こういう仕事で、こういうふうに悩んだ」といった話もチャット上でしています。
そして、会ったときに、言葉の“重さ”を意識して話しています。「チャット文化」の世代は、ネット上でのコミュニケーションには慣れていますが、リアルのコミュニケーションには弱い部分があります。業務内容や指示を明確に伝えるというだけでも、言葉に結構な“重み”があるんです。日ごろのコミュニケーションがあれば、彼らの中に言葉がズシッとインプットされていくのを感じます。
はじめのころは、チャットツール上のコミュニケーションに苦労したこともありましたが、今では常時10名以上の社外人材をマネジメントできるまでになりました。プロジェクトもスムーズに運ぶようになり、売り上げも伸びてきています。チャットツールの導入をきっかけに、コミュニケーションの豊かさが増したのかもしれません。